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実際の裁判事例から学ぶ追い出し条項とは 地方裁と高裁の判断の違いを2021年3月5日の判例をもとに解説

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前田 祥夢
弁護士法人東京新橋法律事務所
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実際の裁判事例から学ぶ追い出し条項とは 地方裁と高裁の判断の違いを2021年3月5日の判例をもとに解説

2021年3月5日、不動産業界に衝撃を与える新たな裁判例が大阪高裁から発表されました。家賃保証会社が特定の条件下で賃借人の物件明渡しと残置物の撤去ができるという契約規定が、消費者契約法に抵触しないとの判断が下されました。この記事では追い出し条項についてと、実際の裁判事例をもとに解説をいたします。

※この記事は2021/04/12にラクーンレントメルマガで配信したものを加筆修正したものです。

尚、【追い出し条項とは 最高裁での裁判事例とあわせて解説】の記事にて、最高裁の結論にも触れておりますので、併せてお読みください。

最高裁の判決をうけての解説はこちら

追い出し条項とはそもそもなにか(編集部追記)

追い出し条項は、賃借人と家賃保証会社が契約する際に設けられる、特定の条件に適合した賃借人に対して物件の明け渡されたものとみなされる特約です

この条項が発動する条件を賃借人がクリアした場合、賃借人が異議をいうまでは物件の退去が確定したと扱われ、部屋に残った家具や道具を取り除くことが可能とされています。

KC’svsフォーシーズ訴訟( 消費者契約法12条に基づく差止等請求事件)

先月5日(2021年3月5日) 、不動産業界にとって注目の裁判例が生まれました。

一定の条件下で家賃保証会社は、賃借人が賃借物件を明渡したものとみなし、そのうえで家財等の残置物を撤去できる、という契約規定の適法性につき、大阪高裁が判断を下したのです。所謂「追出し条項」と呼ばれるものに近い性質の規定ともいえます。

但し、今回争いの対象となったフォーシーズ株式会社が定める条項は賃借人の占有を一方的に剥奪するような、旧来問題視されてきた「追出し条項」とは異なるものですので、そのあたりに留意しながら、この裁判例を読む必要があります。

大阪高裁の判断

では本題です。このような規定が消費者契約法に抵触するかにつき、結論として、大阪高裁は、同規定は同法に抵触しないと判断しました。家賃保証会社による明渡しに対しては否定的な裁判例も少なくない中、注目すべき判断だと言えるでしょう。控訴審で敗訴した一審原告である消費者支援機構関西(「KC’s」)は、かかる大阪高裁の判決に対して上告する予定であるため最終的な裁判所の判断は、最高裁に持ち越しとなる見込みです。

他方、実は第一審である大阪地裁は、同規定は被告による不法行為を認めるものであり、消費者契約法に抵触する違法な規定であると判断していました。一審原告のKC’sとしては、同規定以外の他の規定を適法と判断した一審判決に不服があり控訴したのですが、その結果、同規定についてまで適法と判断されたつまり逆転敗訴となり、結果として全面敗訴となってしまったわけです。

一審と二審の判断の分かれ目について

一審である地裁と、二審である高裁の判断はなぜ分かれたのでしょうか。
判断が分かれた理由の根本は、同規定に対する解釈の違いです。判断の分かれ目を言うならば、規定の要件を満たす場合に、未だ賃借人の占有があると考えるか否か、です。
問題となった規定は、要約すると
①2か月以上の家賃滞納があり
②手段を尽くしても賃借人と連絡が取れず
③電気やガス等の状況から賃借物件を相当期間利用していないものと認められ
かつ
④賃借人が賃借物件を再度利用しない意思であると客観的にみてとれる事情があるとき(以上①~④を「4要件」といいます。)は、賃借人による賃借物件の明渡しがあったものとみなすことができるというものです。原契約が継続している場合にも適用されるため、原契約を強制的に解除できる側面もあります。

占有権の消滅?or違法な自力救済?

この規定につき、地裁は、上の4要件を「賃借物件を現実に使用していないことを伺わせる一定の要件」と判示しているのに対し、高裁は同4要件を「(4要件を満たす場合は)賃借人が賃借物件の使用を終了し、賃借物件に対する占有権が消滅しているものと認められる」ものであると判示しています。
 
地裁は、4要件を満たすと言っても、賃貸借契約が存続している以上、賃借人による占有権限も残っており、そのような状況下で賃借人の占有を奪うのは違法な自力救済、つまり不法行為だと判断しています。4要件を満たしても賃借人の占有は失われていないとの考えです。対して高裁は、4要件を満たす場合、もはや賃借人は賃借物件を占有していないのだからそもそも賃借人の占有を奪うことにはならないと判断しています。最高裁が4要件をどう解釈するのか、同規定は消費者契約法に抵触する違法な規定だと考えるのかその判断に要注目です。

編集部追記:今回のまとめ

家賃保証会社の契約規定の適法性:2021年3月5日、大阪高裁は家賃保証会社が一定の条件(4要件)下で賃借人が賃借物件を明渡したものとみなし、家財等の残置物を撤去できるという契約規定が適法であると判断しました。

一審と二審の判断の違い
大阪地裁(一審)はこの規定を違法と解釈していましたが、大阪高裁(二審)はその判断を覆しました。主な分かれ目は、規定の4要件を満たした場合、賃借人の占有権が残っているか消滅しているかの解釈です。

注意点
この裁判例は所謂「追出し条項」に近いが、旧来問題視されてきた「追出し条項」とは異なる点があり、その特性を理解する必要があります。

結論
家賃保証会社の契約規定については、大阪高裁によって新たな裁判例が設けられましたが、最終的な解釈は最高裁の判断によるものとなる見込みです。この裁判例は不動産業界における重要な方針を示しています。

最高裁判例はこちら
裁判例結果詳細  消費者契約法12条に基づく差止等請求事件| 裁判所 – Courts in Japan

最高裁の判決をうけての解説はこちら

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