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定期建物賃貸借とは? 注意点と利用のフローを紹介

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鶴田 雄大
日本橋中央法律事務所
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定期建物賃貸借とは? 注意点と利用のフローを紹介

不払いの賃料、契約違反、退去要請…賃貸トラブルは大家さんや賃貸管理会社にとって頭の痛い問題です。そのような問題がある中、確定的に賃貸借契約を終了させることができるのが定期建物賃貸借という制度。

平成12年に施行されたこの制度は、賃貸人と賃借人が予め定めた期間内での契約解除を確定的に行えるようにするものです。

しかし、この制度を有効活用するには注意が必要です。書面による契約締結はもちろん、事前説明の徹底や、特に既存の普通建物賃貸借からの切り替えに際しては慎重な手続きが求められます。この記事では、定期建物賃貸借を利用する際のポイントや、注意点を詳しく解説します。

※この記事は2022/12/12にラクーンレントメルマガで配信したものを加筆修正したものです。

定期建物賃貸借とは?

大家さんや賃貸管理会社さんから、日々、賃貸トラブルに関する法律相談を受ける中で、「現在の入居者との賃貸借契約を解除して退去してもらいたいけどもどうすればよいか。」との悩みをよく聞きます。

「入居者が賃料を支払ってくれない」とか「貸した相手とは別の人が入居している」とか明確な契約違反があればよいのですが、それがない場合には正当事由がない限り賃貸人から一方的に契約解除を求めることができないという現実がございます。

というのも、借地借家法という法律によって賃借人は手厚い保護を受けており賃貸人による契約解除に一定の制限が設けられているからです。

そのような中、賃借人の保護を優先させすぎてしまうと、大家さんが建物を賃貸することに躊躇してしまい、かえって建物を借りることができなくなってしまいます。

そのため、より柔軟な賃貸借を実現するために、平成12年3月1日に定期建物賃貸借が施行されました。

定期建物賃貸借制度では、通常の建物賃貸借(定期建物賃貸借と対比して普通建物賃貸借と呼ばれます。)とは異なり更新を否定する条項(更新否定条項)を設けることで、契約期間が満了することにより更新されることなく、確定的に賃貸借契約を終了させることができます。

定期建物賃貸借を利用する際の注意点

もっとも、定期建物賃貸借を利用するためには、賃借人の不利益にならないように、一定の条件を充たす必要があり、特に、普通建物賃貸借から定期建物賃貸借に切り替える際には更なる注意が必要になってきます。

もし一定の条件を充たさなかった場合には、更新否定条項が無効となってしまい契約期間が満了しても契約が更新されることで確定的に賃貸借契約を終了させることができなくなるでしょう。

書面による契約の締結

まず、定期建物賃貸借契約を有効に成立させるためには、「書面によって契約をする」必要があります(借地借家法38条1項)。契約期間や契約の更新がないことについて、賃貸人と賃借人とで認識の齟齬が生じることを未然に防ぐためです。

民法の原則では、口頭の合意であっても有効に成立いたしますが定期建物賃貸借契約の締結では、書面の合意しか有効に成立しない点で、通常の契約とは大きく異なりますので注意が必要です。

書面を交付した事前説明

また、定期建物賃貸借は、あらかじめ、賃借人に対し、定期建物賃貸借の法的性質、すなわち、定期建物賃貸借は

「契約の更新がなく期間の満了により・・・建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」とされております(借地借家法38条3項)。

そもそも、一般の賃借人にとっては、書面において更新否定条項が明記されていたとしても、その法的な意味や賃借人が被る不利益等を理解していないことから賃貸人側において事前説明義務が課されております。

なお、この事前説明の程度については、東京地裁平成24年3月23日判決では「定期建物賃貸借という制度の少なくとも概要の説明とその結果、当該建物賃貸借契約所定の期間満了によって確定的に同契約が終了することについて、相手方たる賃借人が理解してしかるべき程度の説明を行うことを要する」との判断が示されておりますので注意が必要です。

既存の普通建物賃貸借の解約(普通建物賃貸借から定期建物賃貸借への切り替え)

さらに、従前、賃借人との間で普通建物賃貸借を締結している場合においてこれを定期建物賃貸借に切り替える際には、単に定期建物賃貸借を締結するのでは足りず、既存の普通建物賃貸借を解約することが必要になります。

新たに定期建物賃貸借を締結する場合であっても、既存の普通建物賃貸借については、借地借家法の適用により、正当事由がない限り、賃貸人側から一方的に契約解除を求めることができないのには変わりがないからです。

この点について、新たに締結する定期建物賃貸借書の作成や事前説明書面の作成に気を取られるがあまりに、既存の普通建物賃貸借について解約することを失念されている例も多く見受けられ、特に注意が必要です。

また、普通建物賃貸借から定期建物賃貸借への切り替えに際しては、賃借人にとっては、契約期間が満了しても契約を更新することができない点で格別不利益を被ることになりますので、その点について、賃貸人側から積極的に説明する必要があると考えられます。

実際に、東京地裁平成27年2月24日判決では、普通建物賃貸借から定期建物賃貸借への切替えについて、「すでに普通建物賃貸借が継続している賃貸人と賃借人との間で定期建物賃貸借の合意をするためには、賃貸人は、賃借人に対し、普通建物賃貸借を更新するのではなく、これを終了させ賃貸借の期間が満了した場合には、更新がない点でより不利益な内容となる定期建物賃貸借契約を合意することの説明をしてその旨の認識をさせた上で、契約を締結することを要するものと解するのが相当である」として普通建物賃貸借とは別の定期建物賃貸借契約の成立が否定されております。

なお最近では減ってきておりますが、居住用建物については、平成12年3月1日の施行日前になされた普通建物賃貸借については、定期建物賃貸借への切替えは、当分の間認められないものとされておりますので、特に注意が必要です。

定期建物賃貸借の締結手続きのフローの整備をお勧めいたします

以上のとおり、定期建物賃貸借を利用する際の注意点をまとめましたが意外と見落としている事項もあったのではないでしょうか。

既存の普通建物賃貸借の解約や事前説明書面の実施等といった手続を失念しないためにも、今一度、弁護士等の専門家に相談されたうえで、定期建物賃貸借の締結手続のフローを整備することをおすすめいたします。

編集部追記:この記事のまとめ

定期建物賃貸借は賃貸人にとっては柔軟な運用が可能ですが、法的な制約や手続きも多いため注意が必要です。

特に、普通建物賃貸借から定期建物賃貸借への切り替えには様々な注意点があり、書面での契約締結や事前説明が必須です。また、既存の普通建物賃貸借を解約する手続きも重要です。

これらの手続きを適切に行うためには、専門家の意見を求め、事前にしっかりとした手続きのフローを整備することが推奨されています。

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