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孤独死とは 相続人のいない高齢の賃借人が亡くなった場合の法的処理について

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前田 祥夢
弁護士法人東京新橋法律事務所
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孤独死とは 相続人のいない高齢の賃借人が亡くなった場合の法的処理について

相続人の不在での高齢賃借人の訃報。家具や残置物、さらに法律的な手続きはどのように進めればよいのでしょうか。この記事ではこの複雑な問題について、実務上の対応と法的処置の違いから、具体的な手順を詳しく解説します。

※この記事は2022/04/11にラクーンレントメルマガで配信したものを加筆修正したものです。

相続人のいない高齢の賃借人の対応方法とは

さて、今回は直近ご相談を非常に多くいただく、相続人のいない高齢の賃借人が亡くなった場合の法的処理について、その概要をまとめます。実務上の処理と法律的な処理に乖離のあるテーマですが、状況によっては、法律的な処理をきっちり進めていきたいような場面もあると思います。そこで、今一度法律的にはどうなるのかを整理して頂ければと思います。

相続人のいない高齢の賃借人の事例 一人暮らしの高齢者に、賃貸アパートを貸していたところ、亡くなってしまいました。

生前聞いたところでは、その高齢者に相続人はなく、独り身だとのことでした。高齢者の残したテレビや家具などは、どのように処理すればよろしいでしょうか。

賃借人がなくなった場合の対応方法 

前提として、まずは、相続人がいるのかいないのかを調べる必要があります。

相続人調査では、戸籍を取り寄せて調査する方法が一般的です。ここでは、相続人調査の結果、相続人がそもそもいない若しくは相続人による相続放棄がなされて、相続人が実質的にいない事案を対象とします。

自力救済の禁止

このような相続人がいないケースで、実務上は大家様や管理会社様が、アパートの居室に立ち入り、残置物を撤去される例がよくあると思います。

後述する法的手段の時間的費用的ネックに鑑みれば、もちろんそういった処理方法も一面では合理性があるとも言い得るのですが、あくまで法律上は禁止されている処理方法です。

これは自力救済の禁止といい、訴訟などの法的手続きによらずに、自分で占有を移転させる(権利回復を図る)ことが禁止されているのです。

相続財産管理人の選任

では、法律的には、どのような法的手続きを踏むことになるでしょうか。
この点、もっとも一般的なのが、相続財産管理人を選任する方法です。相続人がいない場合、相続財産については、基本的には、国の管理(国庫)に帰属する流れになります。国の管理に帰属させるための手続を、相続財産管理人が行うことになります。

相続財産管理人を選任するためには、被相続人(賃借人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し申立てることになります。

ただ、相続財産管理人を選任して手続きを進めるには、費用と時間がかかります。

費用としては、予納金(一時的に裁判所に預けるお金)が発生します。東京家庭裁判所では100万円、ほかの裁判所でも数十万程度かかります。時間としては、相続財産管理人の選任を申し立ててから、相続財産が処理(処分)されるまで、基本的には半年以上かかるケースが多いです。

特別代理人の選任

他方、相続財産管理人を選任する以外の方法もあります。これは、特別代理人を裁判所に選任してもらい、特別代理人に対し、訴訟提起や強制執行の申し立てをする方法です。

特別代理人とは、訴訟や強制執行などの法的手続きに限って、相続財産に関する手続を進める者です。イメージとしては、亡くなった被相続人の代理人として、被相続人に対する明渡訴訟などに対応する者といったところでしょうか(あくまでイメージです)。

大家様が、亡くなった賃借人の居宅に対して明渡請求訴訟をする際に、大家様が裁判所に対して、特別代理人の選任を申し立てた上、裁判所が特別代理人を選任します。特別代理人を選任する方法によった場合、裁判所に納める予納金も10万円以下に収まるケースが基本です。また、選任手続きも、相続財産管理人の選任に比べると、比較的簡易に選任できるケースが多いです。時間としては、特別代理人相手に明渡訴訟及び強制執行手続きを進めていくことになりますので、やはり半年程度は見ておいた方が無難です。
以上からすると、相続財産管理人選任よりも、特別代理人を選任する方が、金銭的工数的メリットがあると言えます。しかし、特別代理人を選任できないケースもある点には注意が必要です。

以上、相続人がいない賃借人が亡くなった場合の法的処理についてまとめてみました。少しでも皆様の事業のお役に立てれば幸いです。

参考判例)
大決昭和5年6月28日民集9巻640貢
大決昭和6年12月9日民集10巻1197貢

編集部追記:今回のまとめ

相続人のいない高齢賃借人の事例
一人暮らしの高齢者が賃貸アパートで亡くなる。亡くなった高齢者に相続人が存在しない場合、その残置物の処理方法が問題となる。

相続人の確認
最初に相続人の有無を調査する。戸籍の取得と確認が一般的な手段。

自力救済の禁止
大家や管理会社が物件に入り、残置物を勝手に撤去することは、法律上、禁止されている。

相続財産管理人の選任
相続人がいない場合、相続財産は基本的に国に帰属する。この手続きを行うのが相続財産管理人。その選任には家庭裁判所への申し立てが必要で、費用と時間がかかる。

特別代理人の選任
相続財産管理人以外の方法として、特別代理人の選任がある。これは裁判所が選任し、特定の法的手続きのみを行う代理人である。この方法は費用的・手続き的に相続財産管理人よりも効率的とされるが、選任できないケースも存在。

注意点
特別代理人を選任する際の予納金は比較的低めで、手続きも簡易だが、それにもかかわらず半年以上の時間を見込む必要がある。

結論
相続人がいない賃借人が亡くなった際の法的処理には、複数の選択肢とその利点・欠点がある。適切な手続きを選ぶことで、問題を円滑に解決することができる。

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